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METAL JAPAN Ver http://heavy-metal.jp/mag/1720.htm

西暦2019年4月30日。日本の元号「平成」が終了し、「令和」の時代が始まる。
30年余りに及ぶ平成時代、色んなことがあった。失敗、過ちもたくさん犯した。
その失敗、過ちから人々はたくさんの大事なことを学んだ。

このサイトが専門とするハードロック/ヘヴィメタル(以下HR/HMと略)系の音楽シーンでもたくさんの失敗、過ちがあり、そこからこの先二度と繰り返してはならない大切なことを学んだ。
ここで平成のHR/HM界の
「これはどう見ても失敗」
「令和では繰り返してはならない過ち」
を書き綴る。

◆日本のバンドを認めない
やはり日本のメタルシーンの欠点で真っ先に思い当たるのがコレ。どの音楽ジャンルでも日本は洋楽派と邦楽派という日本国外か国内かで評価やファン層が分断されがち。
中でも特に日本人のHR/HMファンは洋楽至上主義で日本のアーティストを認めない人が非常に多くこれがよく問題点として挙げられていた。
日本人がどれだけ頑張ってメタルバンドをやっても日本人というだけでリスナーから敬遠されることは日常茶飯事。こんな風潮があって日本人メタルバンドの人気が伸びにくく、日の目を見る日本のメタルバンドを少なくしていた。

又、人気が出たら出たでメタルとしてではなくJ-POPや歌謡曲扱いされてしまうのが厄介。B’zX JAPANがその好例。売れれば売れるほどHR/HMとして認知されなくなりがち。B’zやX JAPANのようなスタジアム級にもなればどれだけHR/HMに忠実な音楽を奏でていようがその手のアーティストとしては見られない。そしてヘヴィメタルのファンからの支持ではなく流行のJ-POPしか聴かない様な一般層からの支持が大半を占め、それがアーティストのイメージを変えてしまう。


それは幅広い層に受け入れられジャンルの垣根を越えた存在になれたという良き点でもあるが、HR/HMとは別世界の人として除外されてしまっていてHR/HMシーンからするとこれが手痛いことだったりする。こういうバンドがHR/HMの世界に来れば排他的な態度をとられてしまう。
スタジアム級のHR/HMバンドが登場すれば彼らを軸にしてHR/HMシーンの活性化を図れるはずなのにそれができないのだ。
現に2013年にB’zとAEROSMITHの合同ライブ「AEROSONIC」を行うことを発表したときは「B’zいらねー!」と批判する排他的なAEROSMITHのファンが多数いた。音楽的には相性抜群のはずなのに風潮や偏見でそんな扱いをされてしまうのだ。

こういう日本のHR/HMバンドを認めないというのが明らかに風潮だけの評価であり、日本のメタルシーンを成長させにくくしていた。音楽的には間違いなくHR/HMに該当するのにわけのわからない拘りでそれを受け入れようとせず。日本のメタルシーンは自分の国ならではの強みを活かすことを拒否していたのだ。
こういったことがなくB’z、X JAPAN、聖飢魔Ⅱ、マキシマム ザ ホルモンなどといったアーティスト達をもっとHR/HM側の人として受け入れたり洋邦こだわりなく音楽を楽しめていたら日本のHR/HMシーンはより良いものとなっていたはず。

◆90年代以降のスタイルと敵対関係になっていた
HR/HMの最盛期といえば1980年代。1990年代以降はまた新たなスタイルが現れ隆盛し始める。
グランジ、オルタナティブ・メタル、ニューメタルと呼ばれしバンド達が1990年代にムーブメントを起こすがこれが何かと1980年代に隆盛したHR/HMとは別物扱いで除外されがち。これらが「メタルを食った/滅ぼした」などとよく言われる。音楽的にはお互いハードでヘヴィなもの同士で仲間であるはずなのだがどういうわけか敵対関係に。今の視点で見ると実に謎な話である。


特に日本ではこの手の音楽が海外ほど浸透せず、人気が出たバンドは少なく、人気が出たバンドでもHR/HMのファン以外に支持されることが多かった。

そしてメタルバンドとして人気が出たはずのX JAPANが「ヴィジュアル系」というスタイルを生み出す。これは本人達の意向とは関係無く、勝手に生まれ一人歩きしていったもの。
そのヴィジュアル系がまたメタルとは別物、外敵扱いされることに。
「ヴィジュアル系」という肩書は凄まじい影響力であり、それだけで人々に偏見を植え付けてしまう。DIR EN GREYなどメタルを突き進めたヴィジュアル系バンドもヴィジュアル系という肩書だけで日本人メタラー達から酷く嫌われ、日本のメタルフェス、LOUD PARKに出ればそれはもうバッシングの嵐だった。

こういった出来事は人々の誤解を生むメディアの取り上げ方にも問題があった。
ネットが存在しない、発達していなかった頃の人々は風潮や固定観念に囚われやすく、メディアの印象操作や洗脳にいとも簡単に引っかかり、勝手なイメージだけで物事を決めつけることが今より遥かに多かった。

◆世代交代を拒否
2010年代、ロック界はどこの国もアリーナ級の集客力、フェスティバルのヘッドライナー級の新たな人材に不足するようになってきた。LOUD PARK反省会でも書き綴ったように日本のHR/HMシーンは特にこれが輪にかけて酷く1970年代~1980年代に台頭したHR/HMアーティストしか受け入れず、それ以降の世代を認めない人が非常に多い。
2000年代より日本はSUMMER SONICやLOUD PARKといった大型フェスが定着するがそこで日本がより一層音楽シーンの世代交代が出来ていないことが浮き彫りとなる。

まずLOUD PARKは2011年のヘッドライナーのLIMP BIZKIT、2013年のヘッドライナーのSTONE TEMPLE PILOTS with Chester Benningtonが受け入れられず。彼らを観ないで帰ってしまう客が大量発生。いずれも上述の1990年代以降に台頭したロックのスタイル、前者はニューメタル、後者はグランジ、オルタナティブ・メタルを代表するバンドだが上記の通り日本のメタラーの多くはこういうのを受け入れない。

そしてSUMMER SONICでは2014年にメタル界の頂点にまで出世した若きスターAVENGED SEVENFOLDが2ndステージのヘッドライナーを務めるがベテランのMEGADETHよりも後に出ることに文句を言う客が大量発生。このとき他にもGHOSTが、その前の2013年にはVOLBEATという、A7Xと同じくこれから先のメタルシーンを牽引する若き大物バンドが出ていたが彼らに至ってはロクに相手にすらされなかった。

日本のメタラーは90年代以降のスタイルを受け入れず、若者が上に立つことを許さず、2010年代になっても未だにメタルといえばMETALLICAやMEGADETHといった80年代バンドしか理解が無い人ばかりであることが露呈されてしまった。
平成終盤にもなるとレミー・キルミスターやヴィニー・ポールなどなど数多くのメタル界のレジェンド達がその生涯を終え、SLAYERやKISSもツアー活動から引退を表明。明らかに世代交代をしないといけない時期がやって来たというのに日本人は時間の流れを止めて世代交代を行える貴重なチャンスを棒に振ってしまっていたのだ。

そうこうしているうちにLOUD PARKはすっかりラインナップが1970年~80年代の世代向け(特にヘッドライナーが)となり、それに伴って客層は中高年が大多数を占める老人会と化していた。
上記の通り日本国内のバンド、中でも動員力の高いヴィジュアル系やメタル路線のアイドルに排他的なため日本人だからこそ持つ力もうまく活用できず。
新規を取り込めなければ後はシーン縮小を辿るのみ。2016年と2017年のLOUD PARKは会場内のスカスカぶりが目立つようになり、2018年にはとうとう開催すらされなくなった。
他の国々ではまだまだこういうフェスは活気があるのに日本だけがこの様な事態を招くという、他国から大きく遅れをとりシーンのガラパゴス化を起こしてしまっていた。

日本最大のメタルのイベントであるLOUD PARKは日本のメタル界の状況を映し出す鏡と言っても過言ではなく、このLOUD PARKの高齢化、動員数減少、開催見送りは日本のメタルシーンがいかに酷く衰退し瀕死状態になっているかをハッキリと表していた。
ここでようやく誰もが世代交代、新陳代謝の重要性に気づき、若き新規ファンを取り込めていないこの深刻な事態をどうにかしないとマズイと理解する。

「日本人を認めない」
「新しいスタイルを認めない」
「若者を認めない」
平成で多くの日本人メタラーがこんな拘りを持っていてヘヴィな音楽を愛する者同士で散々いがみ合ってきた。こんなことをしても誰一人として微塵たりとも得をすることは無く、ただでさえニッチなジャンルが更にニッチとなり、ただひたすらシーンを衰退させるという、過ち以外の何物でもなかった。


~瀕死状態から回復への兆し~
とことん酷い話を書き綴ってきたが上記の出来事は平成が終わる寸前辺りから改善しつつあり昔話と化しつつある。その模様を書き記す。

◆BABYMETALが外タレとの共演に成功
日本のヘヴィメタル界最大の強みと言っても過言ではないのがBABYMETALの存在。BABYMETALは従来のアーティスト達にはない特別な力を持っていて数多くの常識を覆してきた。
BABYMETALの凄いところは挙げ出したらキリがないほどあるがその中でもここで注目したいのがBABYMETALは自分達が人気を上げるだけでなく携わった人達の人気も上げるということ。
共にツアーしたアーティストや写真を撮ったアーティストなどの知名度も上昇させている。BABYMETALのファンはBABYMETALと携わった人達にも大きく関心を持つ勉強熱心な人ばかりで誰かとコラボする度にその人のこともしっかりとチェックする。知らないままで放っておいたりしない。

中でも凄かったのが2018年10月に行われたSABATONとGALACTIC EMPIREを前座に付けての日本ツアー。アリーナ超満員の客入りでSABATONもGALACTIC EMPIREに対しても大多数の客が好意的に迎えていた。
上述の通り日本人音楽リスナーは洋楽派か邦楽派に分かれがちだったので、洋楽と邦楽との合同ライブを行うと大抵の場合どちらかだけが盛り上がって、もう一方はずっと退屈そうにしていて全然盛り上がらない、俗に言う「地蔵」が大量発生して終わるものだったのだがここで例外が登場。BABYMETALもゲストの外タレ2組も大きく盛り上がり、この2組は日本での新規ファンをたっぷり獲得できた。
このライブは観ていて「外タレみんなBABYMETALと同盟を結べば良いじゃないか」と思えた。

BABYMETALは登場初期こそ従来のアイドルらしくファンもメタルに理解の無いアイドルオタクが殆どであったが、世界中をツアーしては現地の様子を発信し、そうしていくうちにファン達が他のロック/メタルの音楽や世界の情勢を学んでいき、気がつけば多くの人々が非常に幅広い視野と知識を持つようになっていた。そして気が付けばアイドルとメタルのボーダーも洋楽と邦楽のボーダーをも打ち砕き、膨大な利益を生んでいた。

BABYMETALを味方に付けると莫大な恩恵を受ける。BABYMETALもまたかつて排他的なメタラーに敵視されてきたが、こんな時代の流れをも変えてしまえる影響力を持つ存在を敵に回してはいけないことはハッキリしている。
日本特有の力は最大限に活かすべし。BABYMETALの活躍がそれを証明した。

◆DOWNLOAD JAPANの成功

2019年3月、英国発のロックフェスDOWNLOAD FESTIVALが日本初上陸。
この辺りの時代、上記の通りLOUD PARKを始めとするこの手のイベントが中々うまくいっていなかったため、大抵の日本人がDOWNLOAD日本上陸を素直に喜べず。日本でDOWNLOADをやっても他のフェスみたいにまた失敗するのではないかと誰もが不安がっていた。
ところがいざ蓋を開けてみれば
・1万5千人も入れば上出来なはずのところを2万人動員
・晩年期のLOUD PARKより若い客が多い
・GHOSTがここでブレイクし大きく開いていた海外と日本との人気差を一気に縮めた
・若手で初来日のLIKE A STORMもブレイク
と大成功を収めた。
この数年、この手のイベントは上述の通り色々と酷い有様だったが、ここでフェスティバルの本来あるべき姿を取り戻し、大きな課題となっている世代交代も一つずつ課題をクリアして巻き返すようになりだした。

又、LOUD PARKをやっていた頃は上記の通りラインナップなどに容赦なく文句を言う排他的なメタラーが横行していたがDOWNLOAD JAPANではそんな排他的なメタラーに反論し運営に気をつかうような声が多数見受けられた。
前年のLOUD PARK開催見送りで多くの人々が「排他的になったりワガママばかり言ってはいけない」と学習しているのが見てとれた。こういう人々の考え方の変化もDOWNLOAD JAPAN成功の要因の一つになっているのではないだろうか。

◆井の中の蛙を卒業する日本人
時代の流れと共にインターネットがどんどん進化し、今やすっかり世界中から大量の情報を猛スピードで取り入れまくるようになった現代人。上記のBABYMETALの件でも触れたが、この影響で人々はワールドワイドにものを見たり、いくつもの様々な視点でものを見れるようになったり、視野を広めるようになった。

この傾向は音楽界、HR/HM界にもよく表れている。ネットで海外の状況を知ることでAVENGED SEVENFOLD、GHOST、PARKWAY DRIVE、WITHIN TEMPTATIONなどといったバンド達がフェスティバルのヘッドライナー級に昇進していることに気付いたり。
「ベテランの方が偉いとは限らない」「自分の目に見えてる世界だけが全てじゃない」ことを知り、“井の中の蛙大海を知らず”状態を卒業していった。
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世の中のグローバル化に伴うかのように日本人アーティストが日本国外へ進出するのもザラとなり、そうしているうちに「日本のバンドを認めない」「メタルは外タレでナンボ」という偏見・風潮も徐々に緩和されてきた。日本人メタラーの日本のバンド認めない問題は平成終盤時点で“昔に比べたらだいぶマシ”と呼べるぐらいになってきた。
「メタルと認めない」などとよく言われてきたアーティスト達もメタルから除外されたりすることは気が付けば随分と減った。

ネット未発達の時代とは比べ物にならないほど多くの人々が知恵をつけ賢くなっている。平成終盤にもなるともうメディアの印象操作や洗脳は全くと言って良い程通用しなくなり、風潮や固定観念に囚われることはどんどん無くなっていった。

◆昨日の敵は今日の友
80年代HR/HMと90年代に台頭したグランジなどは敵対関係にあるとされていたが、それも昔話。ハードロック代表格のGUNS N’ ROSESとグランジ代表格のALICE IN CHAINSは2016年に共にツアーを実施。ロックフェスでも80年代型HR/HMにグランジ、ニューメタル、パンク系などのアーティストが混同されるのもすっかりザラとなっている。
ラウドなロック同士にボーダーを入れて喧嘩をする時代は終わったのだ。

そして2019年のSUMMER SONICはB’zが日本人初ヘッドライナーに抜擢。更にBURRN!誌の令和最初の表紙にB’zという平成では考えられなかった展開が待ち受ける。このことは令和では洋楽と邦楽のボーダーを完全に取っ払っていこうと言わんばかりの試みともとれる。
これらの試みは相変わらず反対・批判の声もかなり上がっているがDOWNLOAD JAPANが受けた批判と同様、批判に反論する勢力がそれ以上に強い。これもまた時代の変化だ。
BURRN! (バーン) 2019年 06月号
シンコーミュージック
2019-05-02

ロック界は今や敵対関係だった者達がどんどん手を組んで共闘し出すというバトル漫画あるあるみたいな展開となっている。
そりゃこれから先そうしていった方が良いに決まっている。2010年代、音楽業界全体が切羽詰まり出しているわけだし。排他的になってたらLOUD PARKを失い、考え方を変えたらDOWNLOAD JAPANが大成功という結果も出している。昔とは違い、今の音楽業界では喧嘩していられる余裕など一切無い。
排他的になりイキったりするのは人間誰もが通る道だろうし反抗の音楽のメタルが好きなら尚更ではあるがそういうのは出来るだけ早く卒業した方が良いものだ。


平成の失敗からは大事なことをたくさん学んだ。令和以降では
「視野を広げワールドワイドにものを見る」
「時間を止めず世界の流れにしっかりついていく」
「余計なプライドは捨て利用できる力は最大限に利用する」
といったことを徹底的にしていくべきだとハッキリとわかった。
平成では勝手な思い込みや持つだけ無駄な拘りを持ったりして、利用できる力を使うことを拒んだり、味方につけるべき人材までも敵に回したりしていた。その結果LOUD PARK消失に繋がったりしたのだから、もうこれからはその逆をやるべきことは明白である。

洋楽か邦楽か、何年代のものか、メタルかV系か、そういう偏見や拘りのボーダーは邪魔でしかない。平成の失敗達は「ボーダーレスな世の中を作らないといけない」と人々に教えている。
「偏見やボーダーは平成に置いていけ。令和にそんなくだらないものを持ち込むな。」といった精神がこれからの正義となっていくであろう。
音楽に国境は不要。ヘヴィなヤツはみんな仲間。令和ではそういう価値観にアップデートせねば。


めざせメタルマスター 第1巻
伝説のメタラー
METAL JAPAN (ZETA-FACTORY)
2014-09-09